エコツーリズム、再び
今年7月、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録された。大変うれしいことだが、気になる点がある。
屋久島や小笠原が登録されたときに、それまでの観光客と違った層の観光客が押し寄せた。地元の人が望まないような観光客も混じっており、環境への影響も出た。
コロナ禍で観光客の足が遠のいたオアフ島ハナウマ湾のビーチは見違えるようにきれいになり、ワイキキの浜辺にはアザラシが戻ってきて話題になった。
ハワイ人たちは観光一辺倒ではなく、「環境と観光の両立」の大切さを改めて痛感した。この思いはハワイだけでなく、日本の観光にも言える。
観光と環境の両立は二律背反しがちでなかなか難しいが、解決策はある。
いよいよエコツーリズムの出番だ。
アメリカの調査会社の市場調査に拠れば、エコツーリズムの市場規模は2019年は1811億米ドル(邦貨では約20兆円弱)で、コロナ禍終息後の成長マーケットと期待されている。
エコツーリズムは自然に負荷をかけず、旅行を行い、地域にお金が落ちる。そして地域は得た財源の一部で環境を守るというプラスの循環だ。
欧米型エコツーリズムは自然を観光の対象にしているが、日本型エコツーリズムは自然とその中で営まわれる生活・文化も対象になる。この点が注目に値する。
令和3年8月5日現在で197件のDMOが登録されているが、うまくいっている個所はそれほど多くない。
その中で異彩を放っているのは下呂のDMOだ。彼らが標榜しているのはEDMO。EはエコツーリズムのEである。
DMOの推進にはまずは背骨になるビジョンが必要だ。下呂はエコツーリズムを柱にして、目標の年間宿泊人数100万人を超える110万人を2017年に達成している。例えば、金山地区では筋骨巡りツアーがヒットツアーになった。筋骨隆々の筋骨だが、現地の言葉で路地裏のこと。きれいな裏庭、川を跨いで立つ家、昭和の香りのする家並みなどに加え、きれいな水場などがある。この水場を利用して地元のお母さんたちが野菜を洗ったりする。これまで振り向きもされなかった生活がまさに観光資源になっている。
2020年、下呂で開催されたエコツーリズム大会で、下呂温泉観光協会の瀧康洋会長は「エコツーリズムは生活文化が観光の対象になるので、地域の特徴が色濃く反映され、基本的に地産地消で地域を潤す」と語っていた。
エコツーリズムを導入し、生活、文化という地域の宝を磨けば、地域を元気にできるのである。
辻野氏